# ジョー・ボナマッサ──ブルースの古さと新しさを、ギターで繋ぐ男
イントロダクション:クラシックな魂を現代に呼び戻す
ブルースは、古い音楽だ。
だけど、ジョー・ボナマッサのギターを聴くと、その“古さ”が新鮮に感じられる。
マディ・ウォーターズやBBキングが描いたブルースの系譜を、彼は新しい皮膚のまま、真っ直ぐに継いでいる。
70年代のマーシャル、ギブソンのレスポール、スーツ姿の佇まい。
どれもクラシカルだけど、なぜか時代遅れには見えない。
その理由は、彼の音にある。
過去をなぞるのではなく、過去を今に引きずり込むような“現役感”。
それが、ジョー・ボナマッサというギタリストを特別にしている。
SpotifyとYouTubeのリンクを貼っておく。文章と一緒に、耳でも確かめてほしい。
“ギターで語る”ことに命を懸ける
ボナマッサのギターには、焦燥感がある
彼のギターは、ときどき走っているように聴こえる。
じっとしていられないような、内側からの焦りや衝動が音になって溢れてくる。
それは、ただの速弾きとは違う。
感情の早送りみたいな感じだ。
コードとコードのあいだを縫うように、リックやフレーズが滑り込んでくる。
そしてふいに、ゆっくりとした音が戻ってきて、呼吸を整える。
その緩急こそが、ボナマッサのブルースだと思う。
歌とギターのあいだにある“会話”
ジョー・ボナマッサは、ボーカルもとてもいい。
ただ、彼の歌とギターは別人格のように振る舞う。
たとえば《Sloe Gin》では、彼の声が静かに語りかける裏で、
ギターは遠くの山から木霊のように返事をしている。
その関係性はまるで、一人芝居のような対話劇。
ギターが“もう一人の自分”として、言葉にできない部分を背負っているように聴こえる。
ブルースを“未来”として弾く
クラシックな機材を、現代に響かせる意味
レスポール、フェンダーのツイードアンプ、チューブスクリーマー。
ボナマッサの機材は、ほとんどがヴィンテージだ。
だけど彼はそれを、懐古趣味ではなく武器として使っている。
“過去っぽさ”を出したいのではなく、“過去の鳴りを、いまの鳴りに変える”のが彼の流儀だ。
それは音の話でもあり、態度の話でもある。
ブルースというジャンルは、昔のものじゃない。
彼はそのことを、ギターで証明し続けている。
まとめ:ブルースを生きている男
ジョー・ボナマッサの演奏を見ていると、ブルースがまだ“進化できる音楽”だということに気づく。
古くさいどころか、むしろ未来を感じる。
ギター1本で、ここまで言葉を超えた対話ができる人は、今どれだけいるだろう。
彼の音楽は、ただの再現じゃない。
ブルースを「いま」にアップデートし続ける意思の音だ。
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この記事は音楽メディア「クロマティック」によって執筆されました。