投稿者: chromaticjp

  • BBキングが奏でた“魂の震え”

    BBキングが奏でた“魂の震え”

    ルシールと共に生きた男

    夜の静寂に、一筋のギターの音が沁みわたる。
    その音が、まるで言葉のように語りかけてくる。
    ――それが、BBキングのギターだ。

    彼の音楽は、“技術”というより、“祈り”に近い。
    ブルースという古い地層から湧き出るような感情を、彼は一本のギター「ルシール」に託して世界中に伝えてきた。

    なぜBBキングのギターは、これほどまでに人の心を打つのか。
    本稿では、彼のプレイスタイルや音の背景にある“魂の構造”に迫りながら、ブルースの本質に触れていく。

    Spotifyのプレイリストと、代表曲の映像もぜひ体験してほしい。

    【Spotify】

    【YouTube】

    (※”The Thrill Is Gone” Live)

    “引き算の美学”が生み出す感情の揺らぎ

    ひとつの音が語る、長い物語

    BBキングのギターは、決して速くない。
    しかし、その一音には、何十年もの人生が込められている。

    彼は余分な音を削ぎ落とすことで、感情の純度を極限まで高めていた。
    早弾きの華やかさとは真逆の、“間”と“抑制”による表現。
    それが、BBキングの音楽を唯一無二のものにしている。

    彼の指先から生まれる音には、痛みと優しさが共存している。
    だからこそ、聴く者は自分の人生を重ねてしまうのだ。

    ブルースとは、悲しみを美しさに変える魔法

    ブルースの本質は、「悲しみをどう扱うか」にある。
    BBキングは、その感情を“嘆き”ではなく、“美しさ”に昇華してきた。

    彼の代表曲『The Thrill Is Gone』では、恋の終わりがテーマになっている。
    しかしその旋律は、ただの失恋ソングでは終わらない。
    哀しみの中にある気高さや、前を向くための静かな力強さを感じさせる。

    ブルースは“悲しい音楽”ではない。
    それは、“悲しみから立ち上がる音楽”だ。
    そしてBBキングは、その最前線に立ち続けた語り部だった。

    ギターで“会話”を紡いだブルースの王

    ルシールとの対話、そして観客との呼吸

    BBキングの演奏は、常に対話だった。
    それは彼のギター「ルシール」との対話であり、聴衆との対話でもある。

    彼はフレーズを弾き、そして“聴く”。
    その間に生まれる呼吸のような間合いが、観客との一体感を生む。

    単に「演奏する」だけではない。
    感情を共有し、会話を紡ぎ、物語を描いていく。
    BBキングのライブが“心に残る”理由は、そこにある。

    BBキングが遺した“ブルースの入口”

    彼の音楽は、ブルースの深さと豊かさを、初心者にも開いてくれる。
    難しい音楽理論ではなく、心の動きそのものを音にしたような彼のプレイは、誰にでも響く普遍性を持っている。

    BBキングは、ブルースの敷居を下げたのではない。
    むしろ、その本質を丁寧に差し出したのだ。

    まとめ:BBキングの音は、今も心で鳴り続ける

    BBキングが生涯をかけて奏でた音楽は、テクニックを超えた“語り”だった。
    その一音には、愛があり、哀しみがあり、そして希望があった。

    彼の音を聴くことは、ブルースを知ること。
    そして、それは人生と向き合うということでもある。

    たとえBBキングがステージを去っても、そのギターの響きは、これからも多くの人の心で鳴り続けていくだろう。

    この記事は音楽メディア「クロマティック」によって執筆されました。

  • John Mayer|戦略と本能の境界線:彼のギターに宿る現代性

    John Mayer|戦略と本能の境界線:彼のギターに宿る現代性

    設計された“感情”に、僕らは揺さぶられる

    ジョン・メイヤーのギターは、どこか冷たい。
    でも、その冷たさの中に、どうしようもなく人間的なぬくもりが潜んでいる。

    彼は、クラプトンやヘンドリックスの系譜として語られることが多い。
    でも本質はそこじゃない。

    彼は、ギターを“鳴らす”のではなく、“設計”している。
    コード進行の起伏、音色の湿度、リズムの揺らぎ、空気の密度。
    それらをすべて設計図に落とし込んだ上で、あたかも“偶然”弾いたかのように見せる。

    その演奏は、戦略なのか?
    それとも、本能か?

    答えは、たぶんその“境界線”にある。


    https://www.youtube.com/watch?v=Fo4746d1L4Y

    “Neon”に込められた、神経質なまでのバランス感覚

    《Neon》を初めて聴いたとき、あなたは「うまい」と思うだろう。
    でも、何度も聴くうちに、その“うまさ”が怖くなってくる。

    ベースノートは親指で押さえ、
    高音部はスラップで跳ね、
    中音域はミュートしたままリズムを刻み続ける。

    手の構造を完全に無視したような動き。
    しかもそれを、自然に、涼しい顔でやってのける。

    ジョン・メイヤーは、「ラブソングの入り口」にすら設計を持ち込む。
    この徹底された“意識”こそが、彼のギターの現代性なのだ。

    感情を押し付けず、“温度差”で泣かせるギター

    クラプトンの音が“叫び”なら、
    ジョン・メイヤーの音は“無言の視線”だ。

    彼は泣かせようとはしない。
    むしろ「泣くかどうかは、あなたに任せる」と言わんばかりに、感情の“余白”を残す。

    《Gravity》はまさにその象徴。
    重力というブルースを、彼はただそこに“置く”。

    感情の起伏はない。盛り上げもしない。
    でも、その無表情な音に、リスナーの心が勝手に動かされる。

    それは、もはや“ギタリスト”というより、空間の設計者だ。

    アンチロックスターというスタイル

    ジョン・メイヤーは、ロックスターだ。
    だけど彼は、ロックスターの“顔”を持たない。

    SNSでは皮肉っぽく、
    ライブではバンドに溶け込み、
    ステージでも“語らない”ことを選ぶ。

    でも、それでも彼の音は、なぜか主役になる。
    「前に出ないことで、前に出る」──そんな逆説的な在り方が、
    SNS時代の“疲れた耳”にちょうどいいのかもしれない。

    彼はクラプトンの“痛み”を引き継ぐのではなく、
    “設計と理解”に置き換えて、次の世代へとブルースを渡している。


    まとめ


    戦略と本能の“ど真ん中”を歩く音

    ジョン・メイヤーの音は、考えてから感じる。
    「美しい」より先に、「うまい」「冷静」「設計されている」と感じる。

    でも、その思考の先に、ふと感情がやってくる。

    クラプトンが“痛みのブルース”を弾いたように、
    メイヤーは“温度差のブルース”を弾いている。

    それはたぶん、現代の僕らにちょうどいい“距離感”なのかもしれない。

    この記事は音楽メディア「クロマティック」によって執筆されました。

  • Eric Clapton|沈黙のリフと、祈りとしてのブルース

    Eric Clapton|沈黙のリフと、祈りとしてのブルース

    「音は、痛みの最小単位である。」

    文:クロマティック編集部


    ▍第1章|クラプトンは“ブランド”だった。だが、本人はそれを拒んだ。

    ロンドン地下鉄の壁に、かつて書かれた言葉がある。
    “Clapton is God.”

    “Slowhand”と呼ばれたその男は、圧倒的なプレイアビリティとブルース魂で、60年代の若者の“神”になった。
    だが、クラプトン自身はその称号を嫌った。

    彼の音は、むしろ──無名になりたい男の叫び
    自己否定と自己肯定が、1音ごとにぶつかり合っている。

    ブランドになった瞬間から、彼の音は「語る」ことをやめ、「祈る」ようになった。


    ▍第2章|ブルースは“構造”ではなく“問い”である

    クラプトンの音楽は、いつだってシンプルだ。
    コードは3つ、スケールはペンタトニック。

    だが、その“間(ま)”には──
    **「人生の矛盾」**が詰まっている。

    《Tears in Heaven》のコード進行は、美しい。
    だが同時に、あまりにも無防備だ。
    構造だけ見れば凡庸。しかし、音の“置き方”が異常に深い。

    彼はコードの上にフレーズを“乗せて”いない。
    むしろ、そこに**「迷い」**を残している。

    これが“グルーヴ”ではなく、“間(ま)”。
    そこにあるのは戦略ではなく、感情の圧縮だ。


    ▍第3章|クラプトンは「失敗」し続けてきたギタリストである

    彼のキャリアは、チャートでは測れない。
    「スーパーバンド」も何度も解散し、「ポップス」にも何度も擦り寄った。

    だが、クラプトンだけはずっと“ブルース”を離さなかった
    それはジャンルではない。彼にとっての──生き残るためのプロトコルだった。

    「叫びたくて、弾いた。
    弾くしかなかった。」


    ▍第4章|戦略を持たない者だけが、“本物”を掴むことがある

    クラプトンは“戦略家”ではない。
    むしろ、壊れることを恐れずに、音楽にすべてを預けてきた。

    その結果、残ったのが《Layla》《Tears in Heaven》《Wonderful Tonight》。
    どれもが──
    “本気で愛し、本気で壊れたあと”の音だ。

    ビジネスの世界なら、これは“非合理”。
    でも音楽においては、**「壊れた者が持つ説得力」**こそが、ブランドを超える。


    ▍終章|クロマティックな視点で見るクラプトン

    Chromaticは、“音の隙間”を愛するメディアだ。
    クラプトンのように、**「完璧じゃないことの価値」**を信じている。

    彼の音楽が証明しているのは、きっとこんなことだ。

    「戦略の外側に、魂はある。」

    クラプトンのギターは、マーケティングでも、ポップでも、SNS映えでもない。
    ただ──生きるというエネルギーが、そのまま指先に流れ込んでいた


    🎧 LISTEN THIS
    🎥 Eric Clapton – Tears in Heaven (Live at Royal Albert Hall)

    🎧 Spotify プレイリスト:Eric Clapton Essentials

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    📝 あとがき:
    #クロマティックレビュー で感想投稿もぜひ。
    ギターは語らない。でも、語ってしまう何かがある。
    その“間(ま)”を、私たちはこれからも読み解いていきたい。

     

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