
整った音に、あえて残された“乱れ”
サカナクションは、音も言葉も光も、すべてを設計するバンドだ。
その音楽は、感情に流されることなく構造で成り立っている。
だからこそ、新曲《怪獣》に潜む“乱れ”は異質だ。
歪んだギター、曖昧な拍、ざらつく空気。
それらはまるで、整いすぎた空間に放たれた異物のように、
わずかな衝動を残している。
理性の中に配置された“ノイズ”
《怪獣》は爆発しない。
けれど、抑制の中に“引かれた暴力性”がある。
普段は排除される衝動の輪郭が、あえて音の中に残されている。
それはノイズではない。
ノイズをどう置くかまで考え抜いたサカナクションらしい設計だ。
揺れる身体と、残る思考
彼らの音楽は、踊らせるためだけのものではない。
リズムに揺れながら、言葉が頭に残る。
クラブと文学のあいだに立ち続けてきた彼らにとって、
《怪獣》は初めて、“崩れた輪郭”を持った曲とも言える。
設計で衝動を描くということ
サカナクションは今回、“衝動そのもの”ではなく、
衝動の影を設計した。
それは、叫ばずに揺らすための方法論。
《怪獣》は、その静かな実験だったのかもしれない。