3週連続TOP5、“What I Want”ほか3曲──モーガン・ウォーレンがカントリーの重心を塗り替える

アメリカの音楽チャートにおいて、カントリーミュージックがここまで主導権を握る光景は、かつてなかった。

2025年、モーガン・ウォーレンが再び記録を塗り替えた。
最新アルバム『I’m the Problem』のリリースとともに、Billboard Hot 100には一度に29曲が新規チャートイン。過去に発表された楽曲も合わせ、合計37曲が同時ランクインという前代未聞の快挙を成し遂げた。

この数字は、彼自身が前作『One Thing At A Time』で記録した36曲を上回る。
さらに、累積で100曲以上のチャートインを果たしたアーティストとしては21人目、カントリーアーティストとしては史上初の記録となった。

同時TOP5入りという現象が語る、ジャンルを越える動き

この週、チャートのTOP5に並んだ「What I Want」「Just In Case」「I'm the Problem」の3曲は、それぞれに異なる質感を持ちながら、いまのモーガン・ウォーレンを語るうえで欠かせない楽曲となっている。
Tate McRaeとの共演によってポップと交差した「What I Want」、静けさの中に感情の輪郭を浮かび上がらせる「Just In Case」、そして過去の自分と向き合うように歌われた「I'm the Problem」。
どれもが、物語性とリアルさ、そしてジャンルの境界を越える柔軟さを併せ持ち、今の時代が音楽に求めているものに的確に応えている。

カントリー再定義の兆し

ウォーレンが歌うのは、田舎の風景や銃・酒といった典型的なモチーフではない。
むしろ、不完全な自分や迷いを赤裸々に語る姿こそが、今のリスナーが欲する“等身大の物語”なのだ。

“カントリー”という既成概念は、目に見えない線を引くのではなく、
この声が鳴ることで、静かに溶けはじめている。

その中心にあるのは、間違いなく、モーガン・ウォーレンの声だ。

おすすめの記事