
2025年8月21日にリリースされたDoja Catの新曲「Jealous Type」は、ただのダンス・ポップにとどまらない。煌めくディスコサウンドの裏側に、人間が抱えるもっとも普遍的で不安定な感情──“嫉妬”を刻み込み、軽快さと毒を同時に響かせている。ポップ・ミュージックの持つ快楽と危うさを、彼女は改めて鮮やかに提示した。
ディスコポップの仮面と影
サウンドの基調は、70年代ディスコを現代的にアップデートしたものだ。グルーヴィーなベースラインに煌びやかなシンセが乗り、夜の街を駆け抜けるような高揚感をもたらす。しかし、このトラックは単なる「踊れる音楽」に収まらない。リスナーが耳を澄ませば、どこかざわつきを残すようなコード進行や、わずかに不穏さを含むメロディラインが潜んでいる。明るさの仮面の裏で、感情の影がしっかり息づいているのだ。
嫉妬という“正直すぎる感情”
歌詞は、恋愛における嫉妬を包み隠さず吐露する。〈I’m the jealous type, can’t help but spy〉というフレーズは、愛情と執着の境界線を軽やかに踏み越えていく。一般的にはネガティブに語られる嫉妬を、彼女はリズムに乗せ、肯定すらしてしまう。リスナーはそこで、自分の中にもある“目をそらしたい感情”と自然に向き合わされる。音楽が感情を浄化するのではなく、むしろその濁りを抱きしめることを促しているのが「Jealous Type」の強さだ。
危うさが魅力へと変わる瞬間
ポップ・ソングの多くは、快楽の純度を高める方向で作られる。しかしDoja Catは、そこに“不安定な感情”を混ぜ込む。煌めきとざらつき、明るさと暗さ。その相反する要素がせめぎ合うことで、楽曲は一層クセになる中毒性を放つ。聴く者は軽やかに踊りながら、心の奥底を覗き込むような体験をするのだ。
Doja Catが突きつける“ポップの宿命”
「Jealous Type」が提示するのは、ポップというジャンルが本来抱える二面性そのものだ。華やかに聴かせながら、同時に人間の弱さをさらけ出す。光と影を同時に描けるからこそ、ポップは時代を超えて響き続ける。Doja Catはその宿命を誰よりも理解し、挑発的に楽しんでいるのかもしれない。