傷つけて、教えて──『Love Me Like You Do』に宿る“服従の愛”

愛してるのに、痛い

『Love Me Like You Do』は、ただのラブソングじゃない。
それは**支配と服従の感情が交差する“危うい愛”**を、あまりにも繊細に、美しく描いている。
この曲の本質は、「愛されたい」ではなく「愛に溺れたい」という欲望だ。
MV・サウンド・歌詞が一体になって表現するのは、心ではなく身体で伝える愛の形だった。

“触れて”ほしくて、叫ぶボーカル

Ellieの声は、芯があってしなやかだ。
でもこの曲では、その声が少し震えている。
「教えて、どうやって触れればいいの」──そんなふうに、求めているのに、どこか怯えているような感情がにじむ。
その不安定さが、恋ではなく**“欲望としての愛”**を際立たせる。

構成がつくる、“呑まれていく快感”

イントロは静か。サビに向かうたび、ビートが強くなる。
この構成は、まるで理性が少しずつ溶けていくプロセスのよう。
"You're the light, you're the night" という対比が、相手の存在を“善と悪”の両面で描き、服従の美しさを際立たせる。

MVが語る“見えない手”

MVでは、相手に支配されているようで、どこか自分もそれを望んでいるように見える。
目隠し、手錠、重なる影──直接的な描写はなくても、“従う”ことの甘美さが漂う。
それは「奪われる」のではなく、「自ら差し出す」感覚。
愛という言葉では定義できない、エロティシズムと信頼のはざまだ。

やさしく、壊されたい夜に

『Love Me Like You Do』は、傷つけられたくて差し出すような愛を描いている。
それは甘えているのではなく、すべてを委ねる覚悟の愛だ。
“私を壊して”とは言わない。でも、
「壊されてもいい」くらいには、愛している──そんな夜のための曲なのだ。

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