“欲望”は罪じゃない──Ariana Grandeが描く、支配と誘惑の三分間

2024年の曲が、2025年に再燃する理由

2024年6月リリースのAriana Grande『the boy is mine』だが、2025年夏に入りTikTokで「viral dance trend」として再燃し、Billboard Hot 100にも再び登場している。
かつてのBrandy & Monicaによる同名曲へのオマージュでもありながら、アリアナはこれを大胆に再構築し、“欲望”というテーマに真正面から向き合った。

ブランディとモニカへのオマージュ、そしてその先へ

998年に全米No.1を記録したBrandy & Monicaの『The Boy Is Mine』。
アリアナ・グランデの『the boy is mine』は、その伝説的ヒット曲を現代的に再構築した挑戦的なトラックだ。だがこの曲がただの懐古ではないことは、イントロの時点で明白だ。メロディはダークに、ビートはより官能的に。サウンドもリリックも、「彼は私のもの」と語る声が、**“奪い合い”ではなく“支配の宣言”**へと昇華していく。

ヴィランの仮面で語る、正当な欲望

アリアナはこの曲で、欲望を「罪」や「嫉妬」ではなく、自らのアイデンティティとして歌い上げる。MVでは政治家(演:Penn Badgley)を誘惑するキャットウーマン風のキャラクターとして登場し、その視線や仕草のひとつひとつが、力と魅力の象徴となっている。
この演出は、「好きになってしまった」ではなく「この人は私のもの」という確信の表明だ。相手に選ばれるのを待つのではなく、自分で選ぶ。
その姿勢が、アリアナらしい“強さ”として表現されている。

“the boy is mine”は誰のもの?

この楽曲の面白さは、“勝者”が曖昧なままで終わる点にもある。
彼が本当にアリアナのものになったのか?
あるいは、彼女自身が“誰かのもの”になるつもりがあったのか──
答えは明かされない。でも、それでいいのだ。この曲の核心は「誰かを手に入れること」ではなく、**「自分の欲望を自分の声で語ること」**だから。

──悪女という名の自由

Ariana Grandeの『the boy is mine』は、90年代ポップR&Bの文脈を引き継ぎながらも、2025年の価値観で再構築されたポップソングだ。
“悪女”というレッテルを軽やかに着こなしながら、その奥にある強さと自由を、たった3分で描ききる。
欲望を隠さず、誰にも委ねず、自分の美学で貫くその姿に、現代の「ヒロイン像」が投影されている。

おすすめの記事