閉じ込められた世界で、君と──『Stuck with U』が描いたロックダウンの愛

恋がドラマチックである必要なんてない。ただ、どこにも行けない夜を、君と過ごせたこと──それだけで、十分だった。

2020年、世界が一斉に足を止めたロックダウン期間。Ariana GrandeとJustin Bieberが手を取り、静かにリリースした『Stuck with U』は、音楽史の中でも特異な位置にある。大々的なプロモーションも、ツアーもない。ただ、日常の中で人々が見つけた“愛”の形を、そのまま封じ込めたような1曲だ。

今、改めてこの楽曲を聴き返すと、そのメロディの隙間に、閉じ込められた空気と、解けないぬくもりが漂っている。

日常のかけらで描かれた、“選ぶ愛”

『Stuck with U』のリリックは、決して派手ではない。けれど、その分だけ誠実だ。「どこにも行けない」ことがテーマの曲で、ここまで“自由”を感じさせるものがあるだろうか。

“I'm stuck with you”──この言葉は一見、束縛を意味する。でも、この曲ではそれが、誰かと過ごせる「喜び」へと変換されている。選び取るように、確信を持って、ふたりの時間に身を委ねる。Arianaの柔らかな歌声がまとう安心感、Justinの澄んだ声が生む“静かな決意”。まるでふたりが会話しているかのように交差するメロディは、聴く者の心を静かに撫でてくる。

ユーザーがMVをつくる──孤立とつながりのはざま

MVに登場するのは、特別なセレブではない。医療従事者、家族、カップル、ペット、そして孤独を抱えた人たち。世界中の“誰か”がスマホで撮った日常の断片が繋がれ、ひとつの映像として仕上がっている。

「家にいなきゃいけない」という強制力の中で、それでも人は“つながり”を探していた。その姿を、アーティストではなく“リスナー自身”の映像で描いたこのMVは、当時のリ

静かで小さな、永遠のラブソング

終盤、ふたりの声が重なっていくハーモニーは、恋人同士の距離のように近づいたり、離れたりを繰り返す。そこに派手なアレンジはない。むしろ、“何も足さない”ことで、この曲は永遠の余白を手に入れた。

“Stuck with U”──それは「ずっと一緒にいる」というより、「あなたとなら、どこにも行けなくていい」という愛のかたち。選び取った人と、ただそこにいること。それだけで、人生が特別になるのだと、この曲は教えてくれる。

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